子育てと心

人を指差すのはなぜ失礼なの?文化的背景・心理と、子どもへの上手なしつけ方

日常でふと気になる「人に指を差す」という行為。
なぜかイラっとしたり、逆に咎められたりすること、ありませんか?

この記事では、

  • なぜ指差しが世界中で「失礼」とされるのか
  • その心理的・文化的な背景
  • そして、子どもが指を差すときのしつけ方

まで、掘り下げていきたいと思います。

指を差す行為が「失礼」とされるのはなぜ?

指を差す行為が不快に受け取られるのには、いくつかの理由がありました。

● 攻撃性の象徴としてのジェスチャー

人差し指を伸ばして相手を示す姿勢は、古来より攻撃や威嚇の構えに似ており、人間の本能的な「身の危険」への反応を引き起こすとされています。

● 呪術的な意味合い

中世のヨーロッパやアジア圏では、指を差すことは呪いや不吉を向ける行為と考えられていた文化もあったそうです。

● 責任の押しつけや羞恥の喚起

「あなたが悪い」「あの人が失敗した」といった名指しによる非難や恥を与える動作として受け取られることがあります。

● しつけ・教育の影響

日本や韓国など、儒教的な価値観の強い国では、「人を指差すのはマナー違反」として小さいころから強く注意されています。

世界各国での指差しの評価

ちなみに、世界の各国で指差しという行為がどのような評価を受けるのか調べてみましたので、抜粋してご紹介します。

地域指差しの評価解説
🇯🇵 日本失礼・非礼とされる手のひらで示すのが一般的
🇰🇷 韓国非常に失礼目上の人には特にNG
🇺🇸 アメリカカジュアルだが、嘲笑を伴うと失礼指差しは強調の一部として使われる
🇬🇧 イギリス野暮・無礼な印象フォーマルな場では避けるべき
🇮🇳 インドタブーに近い指差しより視線やあごで示す文化
🇹🇭 タイ非常に無礼頭部や人への指差しは禁忌
🌍 中東禁忌・特に左手はNG手の使い方に厳格な文化あり

おしなべて指差しという行為がポジティブに捉えられることはないようです。

なぜ「指を差されると腹が立つ」のか?

それには指差しを受けた人に対して、以下のような心理的背景が考えられます:

  • 見下されているように感じる(上下関係の強調)
  • 攻撃された・非難されたと感じる(身体的防御反応)
  • 恥ずかしいことをさらされた感覚(羞恥心)
  • 過去のつらい体験の再現(トリガー反応)

指差しは、言葉以上にダイレクトに相手の心に作用する、強い非言語的メッセージです。
無意識の癖になっている場合、すぐにやめるのは難しいかもしれませんが、人との関係性や印象を考えると、長い目で見て控える意識を持つことが大切だと言えるでしょう。

子どもが人を指差すときの上手なしつけ方

指差しは大人の社会では「失礼」とされる場面が多いですが、
子どもにとっては単なる「興味の表現」や「気づいたことのアピール」に過ぎないことがほとんどです。

だからこそ、怒って止めるのではなく、子どもの成長を支えるかたちで、やさしく教えていくことが大切です。

💡しつけのポイント

✅ 1. 「ダメ!」だけで終わらせず、理由を伝える

たとえば、

「人を指差すと、相手がちょっとびっくりしたり、イヤな気持ちになることがあるんだよ」
というように、相手の気持ちを想像する習慣を育てましょう。

✅ 2. 「見つけたね」と共感してから、代替方法を教える

「見つけたね、すごいね。伝えるときは、こんなふうに手のひらで教えてみようか」
子どもの気づきを否定せず、言い換えの選択肢を教えていくのがコツです。

✅ 3. 親も「手本」となるように心がける

親やまわりの大人が人を指差さず、丁寧なジェスチャーをする姿を見せることが、何よりのしつけになります。

✅ 4. 絵本を使って自然に伝える

絵本は、マナーや思いやりを子どもに伝えるための強力な味方。
子どもが楽しみながら学べる、指差しやマナーに関するおすすめ絵本をご紹介します。

指差し・社会的マナーに役立つ絵本おすすめ5選

① 『はじめてのマナーえほん』

  • 対象年齢:3歳〜
  • 内容:食事・外出・園生活など、さまざまな場面のマナーをわかりやすく紹介。指差しなど、日常の「ちょっとした行動」をどうするかが具体的に描かれています。
  • 特徴:良い例・悪い例の対比があり、親子で会話しながら学びやすい。
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② 『おもいやりの絵本』

  • 対象年齢:3歳〜
  • 内容:「どうしてマナーって必要なの?」「どうやって人にやさしくするの?」を、物語を通してやさしく教えてくれる一冊。
  • 特徴:思いやりやマナーの背景にある“気持ち”を育てる絵本です。
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③ 『きんぎょが にげた』

  • 対象年齢:1歳〜
  • 内容:ページの中に隠れた金魚を探す人気絵本。指差しが自然に出てくる絵本ですが、「気づき」をほめたり、言葉に変える練習にも。
  • 特徴:指差しを「伝える力」に変えていける、導入にぴったり。
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④ 『どこかな どこかな?』

  • 対象年齢:1歳〜
  • 内容:身近なものを探していく遊び絵本。語彙力や観察力、指差しの使い方を楽しく学べます。
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⑤ 『すきなの どっち?』

  • 対象年齢:0歳〜2歳
  • 内容:2つの選択肢の中から「好きな方を指差す」参加型絵本。自分の気持ちを伝える練習になり、自然なジェスチャーの使い方を促します。
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おわりに:小さな仕草に宿る、人と人とのあたたかさ

指を差すという行為は、一見ささいな動作のようでいて、
そこには文化・心・歴史・マナーといった豊かな背景が詰まっています。

そして子どもにとっては成長過程にある自然な表現です。

だからこそ、怒らず、否定せず、丁寧に代替手段を教えることが、将来の「思いやりあるふるまい」につながります。

絵本を通じて親子で考えたり、生活の中で少しずつマナーを身につけていけたらいいですね。

参考文献・おすすめ資料
  • 『ボディランゲージの心理学』 デズモンド・モリス
  • 『非言語コミュニケーション』 エドワード・T・ホール
  • 『ジェスチャーの文化比較』 デヴィッド・エバンス
  • 『しぐさの人類学』 中村雄二郎
  • 各国マナー比較サイト(文化庁、UNESCO資料など)

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